information science dept.
情報工学科
project x プロジェクトX物語 1:
日本語ワードプロセッサの世界
--工学を目指すすべての若者に捧げる--

湘南工科大学

shonan kouka daigaku
NHK プロジェクトX 2002.9.3放映より引用

NHK projectx studio


amano kenkyuusitsu


sekai hatsu no nihongo waapuro jw-10 工学部は「物を作る」為の技術を研究・勉学する学部です。

と言っても、既にこの世界に存在する物ではありません。

いまだこの世に無い物、私たち人類の役に立つもの、人類の幸福に多少とも貢献できるもの、そういう物を創り出すことを使命としています。

しかし、それは、言うは易く、行なうは難いことの典型でしょう。いまだ、この世に無い物を私たちはどのようにして想像し、そして創造することができるのでしょうか。この物語は、幸いにして、そのような経験を持つことができた筆者が、若い人たちに少しでも工学の面白さを理解してもらえたらという思いと、そして新しい物創りを行うヒントになればとの思いから語ったものです。



NHK,民放による日本語ワードプロセッサJW−10研究開発ストーリの放映

point.jpg 平成6年(1994)12月16日 NHK総合
ハイテク時代の匠

point.jpg 平成14年(2002)9月3日(火)21:15〜22:00 NHK総合
 プロジェクトX〜挑戦者たち 「日本語ワードプロセッサ」

point.jpg 平成14年(2002)9月5日(木)0:15〜1:00 NHK総合
 プロジェクトX〜挑戦者たち 「日本語ワードプロセッサ」

point.jpg 平成16年(2004)3月7日(日)18:00〜18:45 NHK衛星第1
 特選 プロジェクトX〜挑戦者たち 「日本語ワードプロセッサ」

point.jpg 平成16年(2004)8月31日(火)21:15〜22:00 NHK総合
 プロジェクトXアンコール 〜挑戦者たち 「日本語ワードプロセッサ」(リメーク版)

point.jpg 平成16年(2004)9月2日(火)1:15〜2:00 NHK総合
 プロジェクトXアンコール 〜挑戦者たち 「日本語ワードプロセッサ」(リメーク版)

point.jpg 平成17年(2005)、9月30日、10月2日 スカイパーフェクTV!「ヒストリー」チャネル
    プロジェクトX〜挑戦者たち 「日本語ワードプロセッサ」

point.jpg 平成18年(2006)9月29日(金)23:15〜23:45 日本テレビ
  「未来創造堂」

時は、1970年代初期にさかのぼります。

コンピュータは単なる数学的計算をする機械から、あらゆる情報処理をする機械としての可能性に挑戦されていました。 その一つの壮大な試みが、人間の知恵をコンピュータで実現しようというものです。この分野は人工知能、いわゆるAI(エーアイ)と呼ばれています。典型的なものが自分で考え、行動するロボットです。

ちょっと古くなりますが、スターウォーズに出て来るR2−D2、C−3POなどがそれにあたります。もっと古いところでは、手塚治虫さんの鉄腕アトム、妹のウランちゃんなどが挙げられます。

中でも、私の最も好きなロボットはエイトマンでした。頭部には人間の脳と同じ程度の大きさの人工頭脳(コンピュータ)、肩にはバックアップ用の補助電子頭脳、そして胸部には超小型の原子炉を持ち、人間同様に考え、そして弾よりも速く走ることができるのです。C−3POやアトムのようなロボットと違い、見た目も普段はまったく人間と変わりません。しかも、エイトマンは正義の味方なのです。エイトマンには内部の見取り図が存在し、頑張れば創れそうな気がしました。この工学の粋を結集した存在に少年時代の私は強い憧れを持ち、そして今もその憧れを持ち続けているのです。

Fon Noiman no eeru daigaku deno kouen hyousi Fon Noiman no eeru daigaku deno kouen urabyousi

Sixth printing, February 1967
フォン・ノイマンがエール大学での講演で論じた「コンピュータと脳」の本。2版なら今でも入手できる。


ロボットは、しかし、必ずしも人間の姿をしている必要はありません。「2001年宇宙の旅」でA.C.クラークの創り出したHAL、「ガニメデの優しい巨人」でJ.P.ホーガンの作り出したゾラックなどは、見えない、しかし、宇宙船内のどこにでも居て、人間を優しく見守っていてくれるAI(人工知能)ロボットです。

Tetsuka shi tsuitou bun
私はロボット好きであったので、手塚治虫氏逝去の報を受け追悼文を書かせて頂いた。
東京新聞1989年4月14日版から引用


IBMのコンピュータ、ディープブルーが人間のチェス・チャンピオン、カスパロフを破った1997年はAI(人工知能)にとって記念碑的な日になっています。私は、人間のように言葉を話し、人間のように考えることができるロボットを作りたくて、1971年、日本におけるAIの宗家のような京都大学工学部の坂井研究室に進学したのでした。

前列中央が坂井先生、向かって左端が前京大総長長尾先生(当時助教授)、坂井先生の右が私、
その右横(私の肩に手を置いている)が同期で東大教授の辻井さん
斜め左後ろがノーベル賞学者を輩出しているカーネギー・メロン大学教授・元ロボット工学研究所長の金出さん(当時博士課程)

sakai lab. no menbaa
ポンポン山へのハイキング


1970年代の坂井研に設置されていた主力コンピュータは、NECのNEAC2200モデル200という小型のメインフレーム(汎用計算機)でした。メインフレームと言っても、現在、普通に使われているパソコンの何万分の一の力しかありませんでした。

ちょっと背の高いテーブルのように見えるものが、コンピュータ本体です。ここに、中央処理装置(CPU)、主記憶、周辺装置のためのインターフェースのスロットなどが置かれています。後に5台、ちょっと昔のSFに出て来る磁気テープハンドラーが見えます。右下端にテレタイプが見えていますが、これは直接、コンピュータにつながっているのではなく、プログラムをコンピュータに読み込ませるための1列に8個の小さな穴のあいた紙テープを作るためのものです。プログラムを紙に書いて、それをこのタイプライターで打つと紙に印字されると同時に紙テープができます。それを、中央処理装置の上辺りに置いてある紙テープリーダで読ませて、磁気テープに書き込むのです。今から思えば隔世の感があります。

NEAC2200モデル200
sakai lab. no konpyuuta


コンピュータとの対話は今のように、キーボードとマウスと液晶モニターで行うのではなく、私の右手(写真向かって左側)にある細長いコンソールパネルから行っていました。ここにはスイッチがずらりと並んでいて、コンピュータが理解できる8進数を直接入力してコンピュータに「プログラムを紙テープから読み込んで磁気テープに書き込め」というような命令を出していたのです。右側にはミニコンのコンソールパネルを示しました(こちらは16進数で入力します)。CPUの上に30cm四方程の立方体に近い水色の箱が見えています。後ろにある磁気テープハンドラの1台目を隠している箱ですが、これが紙テープリーダです。後で、拡大図をお見せしましょう。


sakai lab. no konpyuuta to watashi  sakai lab. no konpyuuta to watashi


私の自然言語処理の原体験はここから始まりました。

自然言語処理とは、コンピュータに私たち人間の言葉を理解させることを目的としたAI(人工知能)の一分野です。仮名漢字変換、自動翻訳などはその典型的なものです。最近ではインターネット分野で「自然言語による検索」などもポピュラーな応用になっています。


kami teepu riida kami teepu riida
右の写真では紙テープに開いている穴が見えています。


上の写真が紙テープが掛かった状態の紙テープリーダです。この写真では良く分かりませんが、紙テープは何十メートルにもなり、時に足で踏んで切ってしまったものです。


kami teepu kami teepu riida


これは、紙テープとミニコン用の紙テープリーダです。右の丸い枠の中に紙テープを入れ、左の読取り部で読ませます。紙テープは左の方に物凄い速さで送られていきます。

当時は、コンピュータ自身がこのようにまだまだ未熟の状態だったのです。コンピュータで漢字を扱うなどということは、一般のコンピュータ利用者には考えられもしませんでした。


katakana taipuraita no shutsuryoku


これは、NEAC2200/200で当時ポピュラーであった歌謡曲を私がタイプして印刷したものです。ローマ字か、カタカナでしか出力できなかったのです。そして、それが常識だったのです。漢字を扱えるコンピュータは、まだ存在していません。

漢字をタイプライティングしたい場合、それを専門とする会社に依頼してタイプしてもらわなければなりませんでした。漢字タイピストは特殊技能者であったのです。


wabun taipuraita  wabun taipuraita
NHK プロジェクトX 第95回
〜ワープロ・日本語に挑んだ若者たち〜
2002.9.3 21:15〜22:00
より引用


このタイピストの前にある大きな四角の箱の中には、ちょうど三文判のような活字が数千個入っています。タイピストはその中から目的の活字を探し出し、右手のレバーで拾って、紙に打ちつけてタイプしていました。勿論、間違えれば全文打ち直しになります。


eibun taipuraita  wabun taipuraita
NHK プロジェクトX 第95回
〜ワープロ・日本語に挑んだ若者たち〜
2002.9.3 21:15〜22:00
より引用


キーボードを見ずに、両手の10本の指でかろやかに打つことができる英文タイプライタと、腕を使って活字をひとつづつ拾って打たなければならない和文タイプライタの優劣は比べるべくもありません。英文タイプは、手で書くより速く、そして綺麗に文字を書くための機械。一方、和文タイプは単なる清書機でしかありませんでした。


pootaburu kanji nyuuryokuki

これはアタッシェケース型のポータブル漢字入力タブレットです。約2000字の漢字が表面にずらりと並んでいます。右にコードが付いているペンのような物が本体に差し込まれているのが見えますが、このペンを取り出して文字を突付いて文章を綴っていくのです。

仮名漢字変換が実用化できなかったら、携帯電話でメールするにはこれを持ち歩くことになっていたかもしれません。

このような事態を憂いて、日本語はカタカナで書くべきであると主張する会が古くから存在していました。
「ザイダン ホウジン カナモジカイ」です。今の私たちは、ほとんど何の苦労もなく、パソコンで、そして、携帯電話で漢字を使っていますが、ほんの二十数年前までは、漢字を機械で使うということは絶望的に困難なことだったのです。

katakana taipuraita no shuturyoku
「まずは「カタカナ ひらがな〜まじりブン」から キクチ カズヤ
カナノ ヒカリ 915ゴウ 2002ネン ハル
より引用





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